2024年9月22日日曜日

電磁石オフでPIC16F1705が壊れる原因を調査

 はじめに

 前回の記事で電磁石をオフで発生する逆起電力を

計算してみました。 今回は、その逆起電力が

指数的に減衰する振る舞いを計算して見る。


減衰する電圧の計算

回路の微分方程式を立て、

減衰電圧の関数を求める。


電磁石オフにすると次図のように

逆起電力による電圧が発生し、その後下がっていく。




この減衰曲線からPICのポートにかかる


電圧と時間を求められる。


PIC 15F1705ポートの入力回路

PIC16F1705の電磁石オフの検出回路は、上のように

なっている。一応保護回路も入っている。




電磁石オフ時の回路図






電磁石に流れる電流の微分方程式は

上の説明図のようになる。


変数分離形を使えば手でも解けるが

ここでは、hp50gを使って解いてみる。



hp50gで微分方程式を解く


手順は次のとおり


1)微分方程式をhp50g用に修正

2)スタックに次の順序で入力

微分方程式

変数名


hp50の画面を入れる




3)DESOLVE関数で解を得る





一般解が求まる


一般解の定数を定める




電磁石オフ時の初期値

t=0 ,  I(0) = 1 A を式に代入して


定数C0を定める


C0 = 1A


減衰応答の式が定まる。



逆起電力の減衰時間を計算


定数を定めた式を

 hp50gのSolverに入れて、減衰時間を計算する


減衰応答の式で

S1outが 10V になる時間を求める


微分方程式で解いた式は、回路に流れる電流の変化を示す式なので

Solverの y値には、10mAを入力している。






減衰時間 t =2.57(μsec)


PICのポートにかかった電圧

 電磁石をオフにすると最初

  最大の逆起電圧Vl = 1000VIが発生して

        (コイルの並列抵抗 1KΩ として)


 その後、

逆起電圧Vlは、指数関数的に減衰していき


約2.57(μsec) 経過で 10Vとなる


 この時、PICのポートには、5Vが加わっている。


結果として

 この減衰電圧波形が加わったことで、

PIC16F1705のポート入力が壊れたことになる



まとめ


電磁石から信号を使うには

電磁石の逆起電力対策が必要となるので

下記の1)、2)の対策は入れていた。


1)コイルに逆起電力防止のダイオードは入れる

2)PICのポートの前にも電源クランプの

ダイオードも入れる


 それでも駄目だった。


原因を推測してみると

 逆起電力の電圧が発生した時に

ダイオードが有効に働くまに

時間を要するのではないか?


保護のダイオードが応答するまでに

PICのポートには、2.57sec  の間、

規定以上の電圧がかかり続けます。


これによりPICのポートが壊れたと

思われます。


PICなどのマイコンでコイルの電圧を扱う時には、

事前の十分な検討の必要性を実感しました。


オシロなどで測って、安易に波形から

これで良いだろうと進めると、

思わぬ結果になるということです。


今回は、PO16F1705のポートが壊れた。


逆起電力は、侮れない!!


2024年9月1日日曜日

落下開始を検出しているPIC16F1705がまた壊れた(壊した) 重力加速度計

 状況

 しばらく置いておいた、重力加速度計を動作させたが動かない。

調べてみると、落下開始の信号が検出されない。


落下開始の信号は、電磁石をオフ時に発生する

電圧を検出して、PICに入力している。


この電圧の大きさは、

アナログディスカバリー(AD2)で測って

約8Vくらいだった。


入力保護用に1/2分圧回路を

PICのポートの前に入れてある。


どうも、その程度の保護では駄目らしい。



鉄球の落下検出回路




落下検出は、電磁石に一定電流を流しておき

電流を切ることで 鉄級を落ち、

その時に発生するコイルの電圧を使っている。


電磁石コイルの下端(戻り側)から

落下検出信号を取り出している。名称:S1out



落下スイッチオフでコイルに発生する電圧


計算の都合で コイルの両端に抵抗rをつける。


コイルの電流をオフした瞬間には

起電力VLが発生する。




コイルの起電力は、次の式で求まる。



 VL = 抵抗r  X 定常電流IL


定常電流IL 

5V /  5Ω  => 1A


よって、

 VL = r  X 1A 


この電圧が落下検出信号として S1out に出力される。


VLの発生時間が瞬時だとしても、問題となる電圧。



S1outを受けるPICの入力回路




PICのポートの前には、入力保護回路を入れてある。


入力保護回路は、


ダイオードによるクランプ(VDDとGND)


抵抗分圧回路(1/2)で構成。



SW1オフ時の振る舞い


過渡解を求めるので、次の条件で確認

コンデンサー:短絡

コイル:オープン

抵抗:そのまま


PIC入力ポートには、S1out信号が

1/2分圧された(10kΩ/10kΩ)電圧が

加わる。



計算の結果


電磁石の電流

SW1オン 1A <=定常電流


Sw1オフ 1A   <=電流オフ直後


電磁石コイル 

両端に発生する電圧


    r  VL

1KΩ 1kV


10KΩ 10Kv


100KΩ 100KV



抵抗 r = 1KΩでも

PICのポートに加わる電圧は、


約500Vになる。



VL発生の時間は、かなり短いが

入力ポートがダメージを受けることは

予想できる。


VLの発生時間は、微分方程式を立てて

確認してみる。



まとめ


オシロスコープで電磁石オフ時の

S1outの波形を確認、 約8Vだった。


この値を元に入力保護を設計したのが

間違いの始まりだった。


サンプリング速度が遅いオシロで(Max 1ns DiV)

正しい値を取得できない。


この結果、保護回路は適切に機能せず

結果としてPIC 16F1705の入力ポートが破壊された。


今後の進め方

 ●確認のため、電磁石オフ時の回路の

  微分方程式を立てて、過渡電圧VLの持続時間を確認する


 ●S1outを取り出す箇所を見直し、安全な電圧が

取れるところに変更する


手作り電磁石の力をゼムクリップで計ってみた

手作りした電磁石があるので どのくらいの錘を吊り下げられるか 計ってみることにした 調べると、 バネ計りを使う方法などが紹介されているが 家にはないので、身近なもので試す。 大きなおもりの下にゼムクリップを ぶら下げていき、クリップが落ちた前が 限界とすると...